中江有里 新 プロフィール<完全版>
 
 仕事で大阪に通う日々が続いています。いつも気になるのが、新幹線で新大阪駅に降り立ち、ホームを歩いていると売店にある「うどん屋はこの先にあります」の張り紙。
 その張り紙を見るたび、わたしは自然と笑ってしまいます。
 「大阪のひとはほんまにうどんが好きなんや」と。
 これが東京なら、駅のホームにあるのはたいてい蕎麦屋。蕎麦とうどん、どちらか選べる店でも、中心メニューは蕎麦。上記のうどん屋さんをこの目で確かめたことがないのですが、わたしの予想では「うどんオンリー」のメニューかと。
 大阪に住んでいる時、うどんはしょっちゅう食べていましたが、蕎麦は大晦日の「年越し蕎麦」くらいしか食べていませんでした。
 大阪はうどん文化です。しかしラーメンも食べるし、そうめんも焼きそばもよく食べます(わたしが好きなだけですが)。同じ麺類でも蕎麦だけなぜ食べられなかったのか? 
 それは単純に美味しくなかったからです(あくまでわたしの味覚の感想)。
 うどん屋が圧倒的に多い=蕎麦屋が少ない=蕎麦はコンビニのざるそばかスーパーのゆでた蕎麦しか食べられない=そういうものが美味しかった試しがない……こんな事情で大阪では蕎麦文化が広がりませんでした(全部わたしの見立てです。蕎麦好きの方、勝手なことばかり言ってすみません!)。
 あれから何年経ったでしょう。正確に言うとわたしが上京して25年。いまわたしが大阪に帰って、家族でいわゆるうどん屋さんに行って頼むのは「鴨せいろ」。言わずと知れた熱々の鴨汁に冷たいお蕎麦をつけて食べるあのメニューです。
 そして我が両親も蕎麦を食べています。昔なら考えられない光景。
 実は大阪でも美味しいお蕎麦の店が増えてきています。件のうどん屋さんもうどんはもちろん、お蕎麦にも力を入れているので、かなり美味しいのです。
 わたしが蕎麦の美味しさに開眼したのは東京に来てからですが、いまだに温かい黒い汁(醤油の色が濃い)のは慣れません。出汁の味が強い関西風の汁が好きです。でも冷たい麺に関しては、冷たいうどんより冷たいお蕎麦の方が好き。よく調べると、関西でも兵庫の出石には出石そばがあり、東京のスーパーでも乾麺が売っているので、いつも買っています。コシが強くて美味しいです。
 しかし甘いお揚げの乗っかった関西風うどんも捨てがたい。冷たいお蕎麦と温かい関西のうどんのどちらかを選べと言われたら悩む……。
 好きな食べ物の中からひとつを選ぶ苦しみって究極の贅沢ですね(もしくはアホです)。